※相談事例は全てご相談者さまの了承を得て記事化しております。
軽度認知障害(MCI)から認知症に進行
在宅介護に疲れを感じているご家族さまからご相談が入りました。
現在、お母さまと同居しているが、ある問題から今後どうすればよいのかアドバイスを求めるご相談でした。
杉並区の荻窪にお住いの娘さまは84歳になるお母さまと同居していました。
お母さまは軽度認知障害(MCI)と診断されていました。
コミュニケーションに問題はないと思っていましたが、最近になって認知症に進行していると疑うようになったそうです。
お母さまの発言に違和感を感じるようになってきたそうです。
お友達との会食の時間が迫っているのにのんびりとテレビを観ているため娘さまが、会食の事を話すと慌てて準備をするようなことがありました。
また、明日買い物に行ってお洋服を買いましょう!というと20分後にお出かけの用意をしたお母さまが、
お母さま「今日はどこに行くの?できればしまむらに寄りたいんだけど」
と言われ、お買い物は明日でしょ、とお伝えすると納得するのですが1時間後にまた、
お母さま「しまむらにいきたいんだけど」
と言われるようになりました。
娘さまも最初はうっかりミスかな?と思っていましたがそのようなことが続くので認知症を疑うようになりました。
かかりつけ医に相談をすると認知症検査を行ってみると良いと言われ検査をされたところ、認知症に進行していることが分かりました。
それから少しづつ生活環境が変わってきたそうです。
【備考】
軽度認知障害(MCI)は普通の常態と認知症の間の位置づけとなります。日常生活に支障がないため発覚されないことも多いのが実情です。
正常な状態に戻る場合もありますが5年ほどで半数が認知症に進行されることもわかってきました。
排泄ミスからポータブルトイレの導入
ある時、お母さまが排泄ミスをしていることが分かりました。
夜、お風呂場でお母さまがご自身の下着を洗っているのを娘さまが目撃したのです。
お母さまは、うっかりしていただけだから心配しないで、と言われたそうです。
しかし、家の廊下に便を拭いたような跡が残っていたり、お母さまの洗濯ものが汚れていることがあるのに娘さまは気づいていました。
お母さまにそれとなく話をしても、お母さまは誰だって歳を取ればそんなときもあるんだからいちいち言わないでよ、と怒ってしまいます。
娘さまはこれまで、ご自身がケアすれば良いと思い介護サービスを使わずに地域包括支援センターの担当者が2ヶ月に一度訪問するだけでした。
しかし、家が汚れてしまうのだけは避けたいという思いがあり、地域包括支援センターに相談をしたところ、ポータルブルトイレを提案されたそうです。
娘さまは、すぐにポータルブルトイレを購入しお母さまのお部屋に設置しました。
お母さまはポータルブルトイレについてあまり良い印象は持っていなかったようですが強い拒否は無かったそうです。
娘さまは時間を見てポータブルトイレの中身を捨てるためお母さまのお部屋を訪室するのですが使用した履歴がありません。
ただ、ポータルブルトイレの横に設置したゴミ箱には使用済みのパッドが捨てられていることはあったそうです。
そんな生活が続く中、トイレが汚れている日が多くなってきたそうです。
便器の外に汚れがあるだけではなく、廊下なども汚れるようになってきました。
お母さまに言うと怒ってしまうのでしばらく我慢していた娘さまですが、汚れを拭きとる作業に疲れを感じていました。
地域包括支援センターで担当してもらっている保健師にそのことを相談すると、お母さまは羞恥心がありポータルブルトイレの使用を嫌がっているのではないかということでした。
それならばリハビリパンツを使ってもらうようにしたらどうか、というアドバイスをもらいお母さまに相談しました。
するとお母さまは、こんなものはボケ老人が使うものだ!私はボケてなんかいない、一緒にしないで!と烈火のごとく怒ったそうです。
地域包括支援センターで担当してもらっている保健師からのアドバイスを実行するとお母さまに怒られてしまうし、汚れは日増しに増えていることから娘さまはどうすればよいのか分からなくなってしまったそうです。
そんな時に当社の相談事例を読まれご相談されました。
※娘さまが読まれた記事は「ニオイにより同居が難しいと判断、老人ホーム探しのご相談」でした。
娘さまの気持ちが固まるまで
娘さまからのご相談を受けて現状を把握することから始めました。
まずはお母さまのADLを確認しました。
【お母さま:84歳】
食事:普通食(通常食)
歩行:自立
排泄:自立?
更衣:自立
義歯:上義歯
認知症:アリ
続いてお母さまのアセスメントを行いました。
時間や場所があやふやになってきていることから認知症における見当識障害が確認できました。
入浴は自立ですが浴槽が汚れていることもあり、そのことを話すと怒り出すため排泄ミスについての自覚はあるように思えます。
リハビリパンツなどの利用は頑なに拒否し、ポータルブルトイレの使用も嫌がっていることから排泄に対して強い羞恥心があることがわかりました。
娘さまの発言から認知症についての病識が無いことが分かりました。
※病識とは自分自身が病気であるという自覚がない状態のことです。薬を飲むことを嫌がったり病院に行くことを嫌がったりすることがあります。
お話を伺う限りであればお母さまの認知症進行は早いと思われます。
また、排泄ミスが無くなることは考えづらく、布パンツからリハビリパンツに変更するのも相当な苦労が必要であると言えます。
認知症が進行することで徘徊などが出る可能性もあります。
お母さまが嫌がるような質問をすると怒り出すことなどから認知症が進行すると、暴言が出てくる可能性もありました。
そのことを娘さまにご説明しました。
そして肝心なことを質問しなければなりませんでした。
それは、排泄ミスについて容認できるか、という点です。
代沢のケースではご自宅が排泄ミスで汚れてしまうことが在宅介護限界の理由となっていました。
娘さまは、
娘さま「はい、その記事は読みました。ウチも同じようなケースだと思っています。正直に言えば排泄ミスで家が汚れてしまうことにはこれ以上耐えられないんです。」
と仰いました。
恐らくですが娘さまの中では老人ホームにお願いするという選択肢が既にあったのではないでしょうか。
このような場合、娘さまの気持ちが固まることが大切です。
入居相談員として確認をいたしました。
相談員「もし老人ホームをご検討ということであればお探しをすることはできます。ただ、娘さまがご納得していない状態だと後々、後悔することにもなりかねません。お気持ちとしてどうなのでしょうか」
娘さまは少し考えた後、
娘さま「相談員さんとしてウチの母は施設に入れるべきだと思いますか?」
と質問されました。このような時、入居相談員として安易に回答することはしません。
これまでの相談事例を思い出しながら回答しました。
相談員「入れるべきですという回答はできません。ただ、在宅介護は介護される側だけではなく介護する側にとっても大変なことです。これ以上はムリだと感じたところが介護ストレスの限界だと言えます。限界を超えてしまうと在宅介護は崩壊してしまいます。そのような時に老人ホーム入居というのは一つの選択肢にはなると思います。」
娘さまはしばし沈黙していましたが、
娘さま「母の面倒を看てくれるホームを探していただけませんか」
何か吹っ切れたような感じが見て取れました。
娘さまの気持ちが固まったように思えましたので老人ホーム探しにおける必須条件や充分条件についてお伺いすることにしました。
◆必須条件
・一時入居金:安ければ安いほど良い
・月額利用費:お母さまの年金+5万円まで
・看取り対応可
◆充分条件
・レクリエーションが充実しているところ
・ベテランスタッフが働いているところ
充分条件は代沢のケースと同じでお願いしますと言われました。
お母さまは長いこと茶道を習っておりお茶を点てるの好きだったそうです。
今でもお抹茶と和菓子を出すととてもうれしそうになるということでした。
レクリエーションで定期的に茶道を行っている施設を探すのは難しいですが、和のレクリエーションを行っている施設であれば探すことはできそうです。
早速、施設選別に取り掛かります。
荻窪の近くにある老人ホームを見学
リストが完成したのでご連絡をすると荻窪のご自宅に伺うことになりました。
ご提案リストから施設についてご説明をすると3つの施設について見学依頼を頂くことが出来ました。
今回はさらに、各施設のレクリエーションが見たいということでした。
施設のレクリエーションはだいたい同じような時間に行っています。
そのため全3回にわたり見学を実行しました。
どの施設もレクリエーションの見学について拒否はありませんでした。
各施設についての見学が終わり感想を伺いました。
A施設「歌の会というのは面白いですね。母は歌も好きなので楽しめそうです」
B施設「ネイルアート良いですね。母は化粧とかも好きでしたしネイルをやってくれたらきっと喜びます。ここピアノあるんですよね。誰が弾いてもいいでしょうか」
C施設「歌手の人が来てコンサートってすごいですね。毎回こんな感じなんですかね?」
娘さまにもお話しましたが少しネタばらしをします。
A施設のレクリエーションは定評があることは知っていました。
レクが大好きな介護職員さんが毎回凝ったレクを企画することは介護士ネットワークから知っていたのです。
A施設であればレクについて後悔することはないと思いました。
B施設は女性スタッフが多く、ベテランから若手まで介護接遇がしっかりしているところです。
今の施設長が接遇に力を入れていて敬語の徹底、挨拶の徹底をモットーにしています。
見学日程が無い日でも接遇チェックを定期的に行っているため介護職員の接遇レベルは高いです。
C施設の豪勢なレクですが、これは完全に見学者狙いだったと思っています。
施設長にレクも見たいと伝えたところ先方から見学日程を出してきたことからそれは分かりました。
通常のレクはもう少し地味になると思います、とお伝えしました。
気になったのはA施設の人員でした。
確かにレクは素晴らしく企画勝ちな感じはしましたがフロアを歩いている介助職員の数が部屋数に対して明らかに少なかったのです。
欠けシフトが慢性化していなければ良いのですがそこは確認必須だと感じました。
入居を決定した理由
見学が終了後にいただいたご質問や相談員として調査しておくべきことをお伝えしてから数日後、娘さまからご連絡を頂きました。
お母さまをB施設にお願いしたいということでした。
娘さまに施設決定の理由をお伺いしました。
娘さま「実は見学に行った施設はあとでインターネットで口コミとかも調べてたんです。どれも★がたくさんついてるところだったし信用できるなと思ってました。
今回、母をB施設にお願いしようと思ったのはネイルアートも良いなと思いましたけど、あちらの営業の方が出来ること、出来ないことをしっかりと説明してくれた点です。」
確かにB施設の営業担当者はハッキリと話すなと思っていました。
通常、ここまで話さないでしょう、ということもしっかりと話をしていたのは印象に残っていました。
勿論、良い意味です。
恐らくはリアルとかけ離れた理想論のようなことばかりを話して入居させてしまった結果、入居トラブルになったケースを何度も経験しているのだと思います。
少し脱線しますが、営業担当者を見ることは老人ホーム選びの参考になるのでポイントを少しまとめておきました。
【ポイント】
・今日決めていただければなどその場で回答を出させようとする決着営業は注意。
・抽象的なことばかり言っている時は注意。
ウチはその方の想いに寄り添った介護を心がけておりますなどは特に注意です。 老人ホームが入居者さまに寄り添うのは当たり前のことだからです。
・約束事を守らない営業マンは注意。
約束の時間に遅刻するのは論外ですが、連絡をすると言って約束の時間に連絡をしてこないなどは激務すぎるか、仕事の対象が利用者さまに向かっていない証拠です。
約束を守るのは仕事上の最低限のルールです。
ご入居後の経過
1か月ほどしてご入居後の様子伺いのお電話をいたしました。
入居当初は帰宅願望もあり特に夕暮れ症候群が顕著だったようですが1か月ほどして落ち着いてきたとのことでした。
※夕暮れ症候群とは夕方の時間帯に起きる不穏の事です。施設内を歩き回り介護職員がお声がけをしてもなかなか受け入れてもらえない状態。
また、レクリエーションにはほぼ毎日、お誘いすると参加しておりその日のレクを楽しまれているということでした。
好きなのはネイルアート、お散歩、歌の日だそうです。
気になっていた排泄の件ですが、施設では布パンツ+パッドで対応しており今のところ問題ないということでした。
取り決めた時間に排泄介助を行うことで排泄ミスを少なくするような試みが実行されていました。
ご入居後、排泄ミスが多いとリハビリパンツ+パッドに変更したいいう要望が出ることがありますがこの施設ではできる限りお母さまの希望である布パンツ+パッドで頑張りますということでした。
お電話の最後に娘さまからこんなお話を頂きました。
娘さま「実は最初にお会いした時に、母をホームに入居させるべきですか?と訊いたことがありましたよね?あの時もし相談員さんが、そうですね、と言っていたらお願いするのを辞めようと思ってました。言わなかったですが他にもいくつか相談していたんですよ。怒らないでくださいね。母のことで私も真剣だったので」
老人ホームにお願いするか迷っている方へ
今回のケースも前回同様に老人ホームにお願いするか迷っている方からのご相談でした。
いや、今回は娘さまとしては施設入居の意思が確定していたようにも思えました。
ただご本人の中で施設入居に対する罪悪感のようなものがあったのかもしれません。
よく、老人ホーム入居のタイミングについてのご質問を頂くことがあります。
入居タイミングはそれぞれの状況によるため一概にこのタイミングです!というものはありません。
ただ在宅介護における入居タイミングの指標について持論を述べたいと思います。
在宅介護とは介護する側とされる側に分かれます。
特に介護する側が限界になってしまうと介護崩壊が起きてしまいます。
最悪の場合は介護放棄やネグレクトに発展してしまいます。
老人ホーム入居は介護放棄やネグレクトを防ぐための一つの手段となり得る選択肢です。
介護する側が以下のような気持になっている時が入居タイミングと言えるのかもしれません。
・私は介護をするために生きてるんじゃないと日々思うようになっている
・身体介助(排泄、更衣、入浴、食事など)を頑張れる自信が無くなってきたと感じている
・24時間ケアしなければならないと思うたびに嫌な気持ちになる
・もし父/母がいなければ違った人生になるかもと現実逃避をよく考える
当社ではこれまでに在宅介護の限界を迎えそうになっているご家族さまから入居タイミングのご相談を頂いてきました。
その経験などをご説明することで在宅介護に対するイメージが変わったご家族さまもいらっしゃいますし、老人ホームへの入居を決断されたご家族さまもいます。
専門的な知識と過去の経験を踏まえてご説明するのも無料相談で行っております。
在宅介護に迷われている方は以下よりご相談いただけば幸いです。
ちなみにセカンドオピニオンとして当社のご相談を利用することも大歓迎です。
Comments