※相談事例は全てご相談者さまの了承を得て記事化しております。
ご家族さまは最長7年と考えていた
今回は転居に関するご相談です。
それまで入居していた介護付き有料老人ホームの支払いが高く、予定していた年月よりも長くなってしまったことで予算超過となり、やむなく他のホームに転居する必要が出てしまったケースです。
ご家族さまは上馬にお住まいでした。
ご入居されているのはご主人さまのお母さまで入居当時は84歳でした。
ご家族さまは当初、お母さまが90歳までにはご逝去されるだろうと思われていたのですが89歳になってもお元気であることから今後の予算を考えるともう少し安い施設に転居する必要があるため、転居先の老人ホーム探しを当社にご相談されました。
当ホームページから土曜日の午後にお電話をいただき翌日、日曜日の13時に上馬のご自宅近くにあるファミリーレストランでお会いすることになりました。
ヒアリングを行ったところ、平均的な寿命、認知症の発症などからお母さまは長くても90歳までにはお亡くなりになるのではないかという予想を立てて施設へのご入居を決定されたそうです。
人間の命というのは正直、本人もわからないことではありますが、施設選びではある程度見込みで予算の見立てなどを考えなければならないのも事実です。
あと頑張っても5年ほどであるならば、できるだけ奮発して良い施設で余生を過ごしてもらいたい、ということで5年前に入居金2000万円の施設へのご入居を決定されたのです。
入居金はお母さまが長年住まわれていた池尻大橋のご実家を売ったお金で賄うことが出来ました。
月々の支払いは家を処分したときの残金、お母さまの受け取られる年金とご家族さまが足りない分を負担することでねん出することが出来ました。
施設に入ってみるとお母さまはそれまでの暗い表情が消え、元気になってゆきました。
面会に行くたびに元気を取り戻していくことにうれしさを感じていたそうです。しかし、施設生活が5年目に突入するとお金の問題が発生してきたのです。
計画と違う!残金が目減りしている
元々、最長でも7年で支払いが終わる計画を立てていたため家を処分した際の残金も7年償却の計算式で成り立っていました。
しかし、このままでは半年も持たずに残金が0円になってしまう事態が発生したことから転居のご相談に至ったのです。
こうしたご相談もまた世田谷区ではよくあることです。
高級老人ホームというのは入居金も高いですが、月額の利用料金もまた高いものです。
平均すれば月額利用料金は25万円~100万円以上という感じでしょうか。
お母さまのいる施設は月額利用料金が35万円で、各種消耗品やレンタル品などを入れると1か月のお支払いが38万円近くになっていました。
この部分はとても大事なことなのでもう少し丁寧に説明していきます。
施設の月額利用料金というのはお部屋の利用料金と食費を含んだ料金であることが一般的です。
しかし、オムツやリハビリパンツ、パッドや飲み物、洋服などの費用は入っておりません。消耗品については毎月、月額費用とは別に発生します。
オムツやリハパン、パッドなどは施設の売上に直結するため持ち込みをNGとしている施設もありますから入居前に必ず確認しなければなりません。
当然ながら施設側で購入する消耗品はスーパーなどで購入するよりも割高の値段設定(定価販売)になりますから月々の支払いも大きくなります。
ご家族さまはご入居時にこの仕組みをよく理解されていませんでした。
月額35万円であれば消費税を考えても39万円以内でなんとかなると思われていたのです。仮にお母さまが6年、7年長生きしたとしてもなんとかなると考えていました。
しかし実際は毎月の支払額が約42万円になっていたのです。
少しわかりやすく図を入れて説明します。
施設利用年数 | 39万円/月支払(税込) | 42万円/月支払(税込) |
1年目 | 468万円 | 504万円 |
2年目 | 936万円 | 1008万円 |
3年目 | 1404万円 | 1512万円 |
4年目 | 1872万円 | 2016万円 |
5年目 | 2340万円 | 2520万円 |
6年目 | 2808万円 | 3024万円 |
7年目 | 3276万円 | 3528万円 |
7年目の差額は252万円にもなります。
グレーの箇所は当初の予算から超過しているためご家族さまが持ち出しで支払いをしなければならないことを意味します。
ご家族さまとしては持ち出しはなんとか控えたいという想いがありましたが現実的には難しいことはご理解されていました。
上馬の施設転居にあたり予算の組み直し
ご相談をいただき入居相談員としてヒアリングを行い予算の組み直しに必要な条件を頂きました。
ご家族さまから以下の条件をいただきました。
・お母さまの年金とこれまでの負担額+5万円までの支払いでまとまること
・できるだけ今の施設クオリティと変わらない施設
・場所は世田谷区内であればどこでも良い
この条件に相談員として1つ付け加えを行いました。
それは、お母さまが100歳まで生きたと仮定して条件に変更がなくてもファイナンスに問題が無いか否かです。
幸いにも旦那さまはご自身で会社を運営されており定年制度が無いためこのままいけば10年後でも支払いについて問題ないことが確認できました。
そこで、クオリティを落とさないことを重視した上で予算内にまとめられるような介護付き有料老人ホームを探すことを優先事項としました。
世田谷区には様々な形態の漏示ホームがありますし、現在でも増加傾向にあります。
これは区民の世帯年収が他の区に比べて高いこと、土地を所有している方が多く高い入居金でも支払いができる土壌があることが挙げられます。
老人ホームはボランティアではありません、れっきとしたビジネスです。
従ってビジネスが好条件で成立する場所にはライバル施設も乗り込んできます。
つまり競争概念が働き、サービスの高クオリティ化を意味します。
世田谷区内で探すということは他の区で探すよりも高クオリティな施設を探しやすく、価格としてもバラツキがあるため予算とクオリティのバランスを取りやすいのです。
探し始めてみると案の定、すぐに条件に見合う施設がぽろぽろと出始めてきました。
その中で当社で知りうる評判や過去のご入居実態などから当該ケースのご家族さまに合うと思われる施設を4つほどピックアップしました。
A施設:小田急線沿線
B施設:田園都市線沿線
C施設:京王線沿線
D施設:田園都市線沿線
ご家族さまは4つすべての施設見学をしたいと希望されましたので4つの施設を予約しました。
2週間で4つの施設を見学する予定でまとまり、やや駆け足になりましたがすべての老人ホームを回りました。
実はC施設については私が一度も訪れたことが無かったので見学前に施設長にご挨拶がてら見に行ってきました。
ご家族さまと同席する場合としない場合、見学で見えてくることが異なることがあるからです。
そして、自分で行ったことが無い施設をどうしてプッシュできますでしょうか?
入居相談員として提案する施設には最低でも一度は伺っているべきだと感じています。
4つの施設を見学し検証を行う
ご家族さまと回ってきた4施設はどれも会社の特徴が色濃く出ており、メリットがとても分かりやすいものでした。
前回も書きましたが、目に見えるメリットというのは施設のウリになりますからパンフレットにも記載されています。
入居相談員として気にしていたのはそこで働く介護士の対応や、全体的に流れている雰囲気そして、入居者さまの顔です。
入居後に「間違った!」「失敗した!」とならないために必要なことです。
見学が終わったその日のうちにご家族さまの上馬のご自宅で意見交換会をさせていただきました。
すると以下のような評価になりました。
◆奥さまのご意見
A施設:○○
B施設:○○○
C施設:○
D施設:△
◆ご主人さまのご意見
A施設:△
B施設:○○○
C施設:×
D施設:○○
なぜ○×かといえば、この点においてはご家族さまが紙面に載せないでほしいという意向があったからです。
ちなみに私の感想がこちらです。
A施設:○
B施設:○○
C施設:△
D施設:○○○
しかし、見学後の打ち合わせでご家族さまには見せていません。
最終的に大事なことはご家族さまが決められるべきことであり、相談員の見解をこうして出すことは判断の色付けになってしまうため好ましくないからです。
意見交換会においては質疑形式で行うことを基本としています。
ご家族さまでお話をする際、質問があることに対して私が知っていることを回答する形式で後半を進めました。
ご家族さまが質問されたのはパンフレットにのっていないソフト面に関することがほとんどでした。
一般的にはこのような質問をされることが多いです。
・介護士のレベルはどうか?
・料金形態で見落としやひっかけのようなものはあるか?
・営業マンの営業トークにトリックは無いか?
・見学とリアルに乖離がありそうか?
私は当社そして私自身が持っている知識についてはすべてお話しました。
意見交換会は約1時間ほどで終了しましたが結論はその日のうちに出ませんでした。
最終的に入居決定した上馬の老人ホーム
意見交換会が終了してから1週間ほどしてご主人さまからご連絡をいただきました。
もう一度だけ、ご自宅に来ていただけないかとご希望されたので日程を決めてご挨拶に伺いました。
結論を出す前に1つだけ質問をいただきました。
その質問は私が100%自信をもって言える回答であったためしっかりと回答を行いました。
すると、ご主人さまは、
「D施設でお願いしようと思います。お手続きをお願いできますか」
と、仰られました。
私は、
「ありがとうございます。では先方の施設長に連絡をして契約及び入居決定日の段取りを行います。」
と、お伝えし手続きに取り掛かりました。同時に、現在入居されている施設についての転居手続きなどについてアドバイスいたしました。
転居は1か月ほどで完了しました。
お母さまは認知症を発症してはいますが、住み慣れた施設を離れることをぼんやりと理解しているように思えました。
慣れ親しんだ施設を去る際、施設のスタッフさんで手の空いている方が玄関までご挨拶に来たのです。
その時のお母さまの顔を見たときに、お母さまはこの施設を離れることを理解されているのだ、と感じました。
そして、お母さまは私の顔を見て、
お母さま「色々とお世話になりました。ありがとうございます。」
と、仰られたのです。私はその瞬間、涙がこみ上げてしまいました。
介護士として施設で働いている時、同じような経験をしたことを思い出してしまったからです。
この仕事をしていると人間の強さを感じることがあります。認知症が進行していてもある一瞬、何かが起こったようにすべてが合致することがあります。
お母さまに深々と頭を下げ、
「いえ、こちらこそ勉強させていただきました。ありがとうございます。」
と告げるのが精いっぱいでした。おそらくは涙声だったと思います。
長いこと相談員として施設紹介のお仕事をしていますが、本当にこの仕事は奥が深く、そして常に勉強なのだと思います。
老人ホームの転居をご検討の方へ
今回はご予算による転居相談となりましたが、老人ホームを転居されたいと考えられているご家族さまからのご相談は増えてきております。
当社で扱った転居相談についていくつかご紹介します。
これ以外にも下の関連記事欄で転居事例を確認いただけます。
当社では老人ホームを転居されたいと思うご家族さまからのご相談についても入居相談員が承っております。
ご相談内容はご相談者さまと入居相談員の間だけの秘密厳守となりますので、なぜ転居されたいのかなどお気軽にご相談いただけます。
また、当社の無料相談は完全無料でご利用いただけます。
いかなる場合においても費用が発生することはございません。
老人ホーム選びをご検討されている方は一度、当社までご相談いただければ幸いです。
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