※相談事例は全てご相談者さまの了承を得て記事化しております。
認知症が進行し暴力に発展
お母さまの認知症が進行し暴力に発展。認知症ケアが限界を迎えてしまったご家族さまが老人ホームへの入居を決意した相談事例となります。
高円寺にお住いのご家族さまから、これ以上家族で在宅介護を行うのは難しいので老人ホームを探してほしいというLINE相談をいただきました。
どのような状況なのかをお伺いいたしました。
現在、91歳になるお母さまはアルツハイマー型認知症を発症しておりコミュニケーションが取れる状態ではありませんでした。
できるだけ家族で頑張ろうと、娘さま、旦那さまはこの3年間寝るまも惜しんで介護を続けてきました。
お母さまのADLを伺いました。
【お母さま:91歳】
食事:普通食(通常食)
歩行:全介助(車いす)
排泄:全介助
更衣:全介助
義歯:なし
認知症:アルツハイマー型認知症
お話を伺う限りで判断すると段階6後半もしくは段階7になってきていると判断できました。
※アルツハイマー型認知症の段階については当記事の最後に説明を載せておきます。
それでもご家族でなんとか在宅介護を続けていたのですが、お母さまの排泄介助時に強い拒否反応が顕著になってきました。
それまではトイレに案内してリハビリパンツを下す行為に対して強い抵抗はなく、排泄ケア終了時に、
お母さま「ありがとう」
という発語も確認できていました。ところがこの2か月で排泄に対して強い拒否と共に暴力が出始めてきてしまいました。
最初は感情の起伏があるのかと思っていましたがその内、トイレに入ると怒り出すようになってきました。
なんとか便座に座ってもらうのですがズボンを下ろそうとするとご家族さまの頭を叩いたり、つねる、唾を吐くなどの暴力が頻繁になったそうです。
また、目の前のご家族さまを認識していないような発言が目立つようになったそうです。
例えば、
お母さま「たすけて!たすけて!お母さん!」
と発言したり、
お母さま「こんなことして!お母さんにいいつけてやる!!」
と、見当識障害がハッキリと分かるような発言が目立つようになってしまいました。
ケアマネジャーに相談したところ自立トイレはあきらめてオムツ+パッドに変更するほうが良いと言われたそうです。
ベッド上での排泄介助に切り替えるとそれまでよりもいくぶん、拒否が和らいだとのことでした。
これで少し介助がしやすくなると安堵した矢先、次の問題が娘さまを悩ませることになってしまいます。
足が痛い、手が痛い疼痛の疑い
お母さまをベッドに寝かせようとする際にも暴力が頻発してしまうようになりました。
娘さまがパジャマに着替えさせようとズボンを脱がそうとすると、
お母さま「痛い!痛い!」
と痛がるようになってきました。どこが痛いの?と訊いても、痛い!痛い!としか言わないためどうすればよいかわかりません。
かかりつけ医に相談をすると慢性疼痛であるとの診断となりました。
疼痛(とうつう)とは:痛みを医学用語で疼痛と言います。慢性疼痛とは検査などでもハッキリと原因がわからないが痛みだけが続いている状態です。関節炎や神経の損傷により生じる場合もありますが、心理状況、精神的要因が関係する場合もあります。
痛みの原因はハッキリと分かりませんが、お母さまは痛みを感じると、痛い!と言いながら手が出てしまうようになりました。
ある日、娘さまが更衣介助を行っているとお母さまが痛い!と言いながら娘さまに手を挙げました。
危うくその手が目に入るところでした。
娘さまは心底恐怖を感じてしまいそれ以後、お母さまの介護が怖くなってしまいました。
それまでも腕をつねられたりして出血をしており娘さまの手は傷だらけだったそうです。
旦那さまにそのことを話すと、
旦那さま「もうこれ以上頑張る必要は無いよ、老人ホームで専門家にお願いしようよ」
ということになりました。
老人ホームに対するイメージ
娘さまは老人ホームに対して抵抗感を持っておりました。
老人ホームは自宅で面倒を看られない家族が使うサービスだと思われていました。
自分は最後まで肉親の母の面倒を看るという強い意志もありました。
しかし、お母さまの暴力があまりに強すぎるため恐怖を感じてしまいました。
また、自分の娘のことも忘れてしまったのか、という悲しみもありました。
どうすればよいか分からずに日々を過ごしていましたが旦那さまの、もうこれ以上頑張る必要は無いと、という一言で心の中にあったモヤモヤしたものが一気にはれたそうです。
そして老人ホームに対してインターネットで相談事例を調べたところ当社のホームページにたどり着いたそうです。
記事を読み、老人ホームに対する考えが変わってきたということでした。
ご自宅そばの老人ホームを探す
背景をお伺いし早速施設探しに対する必須条件と充分条件をお伺いしました。
◆必須条件
・一時入居金:400万円以内
・月額利用費:30万円以内
・レクリエーションが充実
・外出許可がゆるい
・看取り
◆充分条件
・できれば設立10年未満の施設
今回は看取り対応ということと全介助が基本となるため介護付き有料老人ホームで探すことにしました。
特養については申し込みをしておいて順番が来たら検討ということになりました。
高円寺近辺には高齢者施設がたくさんありますから選択肢はかなり多く取ることが出来ました。
また必須条件ではありませんが、ご入居対象範囲は杉並区でお願いしたいとのことでした。
早速調べると最近、介護士から評判が良い施設が出てきました。
リストに盛り込んで作成いたしました。
高円寺の施設見学から体験入居
リストをご提案すると、評判の良い施設について見学依頼が入りました。
もしそこがよければそのまま体験入居を経て本入居という流れになります。
当日はご家族さま(奥さまと旦那さま、息子さま)でお伺いしました。
見学は居室だけではなく浴室、レクリエーションも見ることが出来ました。
見学が終わり感想を伺いました。
娘さま「思っていたよりもキレイでしたし、働いている方も丁寧で良かったと思います。私はここでいいと思ってます。」
旦那さま「料金などについてもわかりやすい説明だし責任者もいい感じでした。私もここでいいと思うけど息子の意見も聞いておきたいです。」
息子さま「ナースは常駐ですか?それと、何かあった時はどうなるのか教えてもらいたいです。そこがクリアになれば私もここでOKです。」
息子さまからいただいた点ですがナースは日勤時のみ常駐です。
夜勤は夜勤介護士2名体制で2フロアを見守ります。
そこで医療的な判断が必要な場合は当日担当のナースに電話をかけて指示を仰ぐスタイルです。
24時間ナースであれば医療行為も行えますが夜にナースがいない施設のほとんどが同じような対応となります。
夜の時間帯に何か異変が起きた場合はバイタル測定と呼ばれる体温、血圧、脈拍、酸素値(SpO2)を測りナースに電話します。
明らかに救急搬送が必要な場合(転倒などによる出血してたり、呼吸停止など)は救急搬送手続きを取り、バイタル測定しナースに報告します。
息子さまからの宿題に全て回答した後、ご家族さまから入居契約書について確認がしたいというご意見を頂きました。
施設から入居契約書をいただきご家族さまにお渡しし、確認期間がありました。
息子さまは法律関係に明るいお仕事をされているので契約書についてはしっかりと確認したいということは事前に言われおりましたので時間がかかることは想定内です。
体験入居スタート
契約関係も無事に完了し、体験入居日となりました。
当日は私も施設の入口まで挨拶に伺いました。
そこで初めてお母さまに挨拶することが出来ました。
車いすで降りられたお母さまは久しぶりの外出のためかご機嫌な感じがしました。
入居相談員として名前と挨拶をしましたがあまり認識はされていないようでした。
ただ、笑顔で手を差し伸べてくださいました。
介護現場で働いていた感覚がよみがえり少し懐かしい感じがしました。
施設は体験入居時に急ピッチでアセスメントを進めます。
この時が一番忙しいかもしれません。
介護士はその時にあったことを細かく記録し、全スタッフに「送り」と呼ばれる情報共有を行います。
情報を常に共有することでケアにばらつきが無いようにするのが介護士の務めです。
体験期間も無事に終わりそのまま本入居が確定しました。
本入居から1週間ほどしてご家族さまにその後についての確認のご連絡をいたしました。
娘さまがお電話にて、
娘さま「お陰様で母はなんとかやっているようです。当初はトイレとお風呂についてかなりの拒否があったらしいのですが今はずいぶんと落ち着いてきていると報告をもらいました。」
娘さま「今回紹介していただいた施設からは、これならお預かり出来ます、というお話を頂きホッとしています。本当にありがとうございました。」
暴力が出ることは事前に施設に伝えています。
施設側からは暴力の程度はしっかりと見定めておきたいというお話をもらっていましたがなんとかクリアできてほっとしました。
お母さまが生活基盤を移してもリラックス出来てきたことを受けて今回の案件をクローズとしました。
アルツハイマー型認知症の段階6と7
文末となりますが、アルツハイマー型認知症には進行度をはかる段階指標があります。段階6と段階7について簡単にご説明します。
段階6:重度の認知機能の低下
記憶障害がかなり進行しており性格自体が変わってしまう状態。
身体介護を必要とし更衣、排泄、入浴はケアが必須な状態。食事についてはかろうじて自立している場合もある。
多くの記憶を失っているが過去の記憶や名前は憶えている。
段階7:非常に重度な認知機能の低下
段階7はアルツハイマー型認知症の最終段階であり会話などは難しい状態。
ほぼすべての身体介助を必要とする。
拒否時に強い反射反応をする傾向がある。
筋肉が硬直し拘縮などにいたり、嚥下障害が出る。
認知症の進行により施設入居をご検討中の方へ
認知症が進行すると肉親であっても認知できなくなってきます。
それはとても悲しいことですが認知症の症状の一つです。
ただ、感情が全て抜け落ちているわけではありません。
嫌なものは嫌ですし、相手の感情が分からないわけではありません。
相手が自分を好きではないとわかれば態度も硬化します。
ケアをしていると感情的になってしまうこともあるともいます。
どうしてわかってくれないの?
お願いだからじっとしていて!
プロの介護士でも時には感情的になることもあります。
認知症ケアは本当に難しいと言えます。
認知症のケアとは常に進化しており理論も更新されているのです。
ただ、こちらが感情的にならずに、なぜ拒否があるんだろう、なにか言いたいことがあるのかな?と常にアンテナを張り続けることで気持ちが通じる時があります。
それでも24時間介護になってしまうのはつらいと思います。
介護とは介護される側だけの問題ではなく介護する側のケアも必要になります。
ご自身でできる限りのことは頑張ったけどもう無理かもしれない、と思った時が在宅介護における認知症ケアの限界ではないでしょうか。
そのような時は我慢せずにケアマネジャーに相談をしたり、周りの人に話すようにしてください。
ストレスがたまると一人でこもりがちになります。
それが悪循環となる場合があります。
当社では認知症ケアが限界になったご家族さまからの老人ホームご入居相談も数多く扱ってまいりました。
当社のご相談はいかなる場合においても費用が発生することはございません。
おひとりで抱え込まずに無料相談をご活用いただければ幸いです。
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