【港北ニュータウン】呼び寄せの老人ホーム選びで注意すべきこと
- 高橋 孝幸
- 2022年6月15日
- 読了時間: 8分
更新日:2024年1月15日

※相談事例は全てご相談者さまの了承を得て記事化しております。
介護の悩みはみんなが抱えている共通の悩み
相談員として日々、皆さまからのご相談をお伺いしているとある種の偏りがあることに気づきます。
皆さまが感じられている悩みやご相談というのは決しておひとりだけが悩んでいることではないことにも気づかされます。
しかし介護にかかわっていなければそのような悩みの共通点に気づくことはないのかもしれません。
今回のご相談内容は首都圏に限らずご家族と親御さんが離れているところに暮らしているなど地域的な距離の問題を抱えている場合に起こり得るケースです。
母が亡くなり父ひとりになってしまった
昨年、母が亡くなりました。
葬儀など身の回りのこともあり仕事を1週間ほど休み実家で過ごし、父とこれからについて話をしました。
父は年齢の割に身体がしっかりしており受け答えなども問題が無く元気であったこともあり、さしたる心配もないだろうと思いそのまま実家を後にしました。
それから半年ほどして父から、ぎっくり腰で入院したと電話で言われました。
心配かけるだけだから見舞いに来なくて良いと言われていたこともあり仕事を続けていたのですが、2週間ほどして病院から電話が入りました。
ナースから父の元気が無く食事などもあまり食べないので心配しているとのことでした。
父はスマートフォンを手放さないタイプだったので、時間を見て電話をしたところ、あまり多くを語ろうとしませんでした。
何度か電話をしているとある日父がボソッと、
父「俺も高齢になってきたから正直、ひとりで暮らすことに不安がある。今回のぎっくり腰で一人暮らしが怖いと感じるようになってしまった」
と、話はじめました。
あれだけ元気で弱音を言わない父が、あんな小さな声で話すのは初めてでした。
元気であるとはいえ父ももう80を超えているんだと改めて痛感しました。
自宅介護(在宅介護)を検討するも
このまま父が一人で家にいることに不安を抱えていたので折をみて妻に父を呼び寄せたい旨の話をしました。
妻は日ごろから私の両親に対しても優しく接してくれて誕生日などにはいつも電話をしてくれるなど、関係は良好であると思っていました。
うちは子供ももう社会人となり家を出て家庭を持っているため自宅には私と妻しかいません。
子供部屋も余っていることからそこを父の部屋として使ってもらおうと思っていました。
しかし、両親を自宅に呼び寄せたいという話をしたところ、やんわりではありますが否定されてしまったことに驚きを隠せませんでした。
妻と何回か話し合いをしたのですが妻の答えは変わらず、本音がどこにあるのか悩んでいました。
ある日、妻が夕食時に本音を話してくれました。
妻は2人の子供を育てるために20年の月日を費やしており、子供が育った今、自分で温めていたカフェをやりたいということで準備などをしていたのです。
自宅の1階を少し改造することで誰でも気軽に来れるようなのんびりしたカフェをオープンしたかったのです。
カフェのオープンのために時間を費やしたく、ケーキやお茶などの選別や経営に関する勉強をひそかにしていました。
これから自分の時間を楽しむための趣味を見つけていました。
妻は責任感が強く、自分で自信が持てないことに関して安易に回答するような人物ではありませんでした。
子供が生まれたときもそれまで勤めていた会社を辞め、子育てに全力で向かってくれました。
そんな妻がカフェと自宅介護の両立はどうやってもできない、だから自宅介護は勘弁してほしいと言ってきました。
私は大学から40年、仕事一筋でやってきていたので妻の本当にやりたいことなどが見えていませんでした。
子育てや両親のケアなどこれまで妻がやってきてくれたことを考えれば、およそ妻に自宅介護をお願いすることはできませんでした。
無料相談へお問合せいただく
そんな時に無料相談へご相談いただきました。
相談員としてこれまでに同じようなケースはいくつも経験してきました。
遠方にいる親御さんを心配しできるだけ近くに呼び寄せたい思いは変わりません。
今回のケースでは老人ホームに入居することについて親御さまがどのように考えられているかをまずヒアリングしました。
幸いなことに親御さんも、できることならば何かあった時にすぐに息子さんの顔を見ることが出来ることを希望されていました。
ご家族と親御さんの意思が同じ方法を向いていることがわかりましたので、老人ホーム探しに取り掛かりました。
老人ホーム選びについてはご家族と親御さんの希望をまず伺いました。
そこで共通点を見出し適合する施設の選別に取り掛かります。
今回のケースでは以下の要望がでてきました。
・あまり大きな老人ホームではなく小さな規模の老人ホームが良い
・自宅から1時間半圏内の老人ホーム
・自立できるうちは自立を尊重している老人ホーム
・月額利用料が20万以下
老人ホームというと介護士が24時間介護するようなイメージを持たれる方が多いのですが決してそのようなことはありません。
自立している方々が入居される老人ホームもたくさんあります。
今回は距離と月額料金のご指定がありましたので、自立した高齢者さんが入居している施設で距離と費用が合致する施設を探しました。
幸いなことに該当する老人ホームがすぐに見つかり、空きもあるとのことから見学希望を出し、相談員として私も同席させていただき、ご家族と親御さまで現地に行きました。
スタッフの接客態度や施設全体の雰囲気を感じ取ってもらったことろ、お父さまがイメージしていた老人ホームと合致していたこともありましたのですぐに入居手続きを行うことができました。
港北ニュータウンの老人ホームへご入居してから
入居日が決定しお父さまが老人ホームへご入居されたのち、ご家族が実家を売却するなどの手続きを行いました。
その後、1か月に数回ほど施設に面会に行かれているとのことです。
半年ほどしてからご家族からご連絡をいただきました。
最初こそ緊張している顔つきだったお父さまですが、最近は施設内で気の合うお友達が出来てきたようで日々、明るく過ごしているとのことでした。
イベントやレクリエーションが充実している老人ホームなので、毎日何かしらの新しい発見があるとのことで入居を喜んでいるとのご報告をいただきました。
呼び寄せは本人の気持ちを大切に
いわゆる遠方からご家族さまのいる地域に引っ越しをすることを呼び寄せといいます。
例えば北海道で独居しているお父さまを東京のご家族さまの家に呼んで同居することも呼び寄せです。
そして、東京の老人ホームにご入居頂くことも呼び寄せと言います。
呼び寄せはご家族さまが何かあった時にすぐに駆け付けることが出来るという安心を得るための行動です。
今回の港北ニュータウンの相談事例ではお父さまが施設に順応出来ているのとても良かったと思います。
ただ施設入居による呼び寄せは失敗率も高くとても難しいのが実情です。
入居相談員として呼び寄せを検討されているご家族さまには、一つだけ気を付けてほしいことがあります。
それは、呼び寄せられたご本人は呼び寄せについて満足されているかということです。
老人ホームの現場で働いてきた経験から申し上げると、呼び寄せはとても難しいということです。
地元で生まれ育ってきた方にとって、別の土地で生活することはとても不安になります。
言葉一つとっても不安になってしまいます。
それは帰宅願望につながることもあればADLの極端な低下につながることにもなります。
帰宅願望は余りに強すぎるものではない限り半年もすると落ち着いてきます。
しかしそれは帰宅願望が表面化しなくなっただけの可能性もあるのです。
私が現場で働いている時、和歌山から呼び寄せられたご入居者さまがおられました。
夕食後に居室まで案内し歯磨き介助をする時に必ず、
「かえりたい。海のニオイがしない。かえりたい」
と仰っていました。
呼び寄せから1年が経過したころ、食事が全く進まなくなってしまいました。
薬の服薬に伺っても、
「いらない、薬飲んで生きながらえても意味がない。帰りたい」
と防ぎがちになってしまいました。
施設としてはレクリエーションなどでなんとか元気になっていただきたいと、好きな長唄の会を催したり、習字なども行いました。
しかし、あまり効果はありませんでした。
そして、3か月後ご逝去されてしまいました。
今、入居相談員として思うことがあります。
このご入居者さまにとって呼び寄せは本当に必要だったのだろうか?
今の自分ならどういった提案をするだろうか?
私ならば和歌山のご実家に近い介護付き有料老人ホームをお勧めすると思います。
ご家族さまが呼び寄せをしたいと言われたら丁寧なアセスメントとカウンセリングを行うでしょう。
当社では呼び寄せをご検討されているご家族さまからのご入居相談も受付しております。
ご家族さまの意向に沿うようなアドバイスやサポートを行ってはおりますが、呼び寄せについてはより慎重にご本人さまの意向を汲むようにしています。
呼び寄せにするか、地元の老人ホームへのご入居にするかなど迷われているようであれば一度、無料相談までご相談いただければ幸いです。
尚、当社の無料相談はいかなる場合においても費用が発生るすることはございませんんのでお気軽にご連絡ください。
Comments