※相談事例は全てご相談者さまの了承を得て記事化しております。
家族会議で長女が実家で在宅介護することになる
お母さまが高齢になり山王のご自宅での一人暮らしが難しくなってきました。そこで4姉妹で家族会議を行い、同じ山王に住む長女さんが実家に入りお母さまの介護をすることになりました。
少し失礼な表現になりますが、ご家族内では介護期間は長くても3年ほどと考えられていたのですが、介護生活が8年を超えたところで長女さんが介護疲れがピークになってしまい、介護ストレスが深刻化した事例となります。
それまで元気だったお母さまがある日、買い物に出かけた際に転倒してしまい足を骨折されてしまいました。
入院こそありませんでしたが骨折以降、おひとりで暮らすことに恐怖感を覚えてしまわれたことを受けて、4人のお子さまで家族会議を開くことになりました。
お子さまは全員、実家から車で15分圏内に住まわれていましたが、いつなん時に何かあるかもしれないので誰か一人が同居して介護することが好ましい、ということで話し合いの結果、長女さんが同居することになりました。
長女さんは2人の息子さんと旦那さんの4人家族でしたが、それまで住んでいたマンションを他人に貸すことで実家に入ることとなりました。
8年前のことだったそうです。
それまで働いていたパートを辞めてお母さまの介護に専念する生活が始まりました。
想定を超えてしまった介護期間
当初の家族会議ではお母さまも高齢になってきているので、介護期間はおよそ3年くらいでしょうと想定されていたそうです。
そのくらいの期間であれば何とかやりくりできるので大丈夫です、ということで長女さんと旦那さんは在宅介護を引き受けました。
息子さん2人は私立の中学、高校に入学していたため転校することもなかったことが決定の大きな要因でもありました。
在宅介護がスタートして3年ほど経過したころにはお母さまはめっきり弱くなってしまい、寝たきりになることが多くなりました。
朝、昼、晩と食事を作り排泄の世話まで身の回りのことを全てケアする生活に最初は戸惑いながらも、独学で調べながら介護を行っていたそうです。
認知症は発症していませんが身体的に不自由になってきたこともあり、訪問介護をお願いするなどして介護生活を続けておられました。
そんな日々が8年ほど続いたお正月明け、長女さんが旦那さんにある話をされました。
長女さま「お母さまの状態もかなり悪化してきているので在宅介護では限界が出来ているかもしれない。施設へ入居して24時間看護などに切り替えるべきだと思う」
旦那さんはこの数年、長女さんが付きっ切りで介護してきたことを理解していたので、
旦那さま「おまえがそういうなら家族会議を開いて施設への理解を得よう」
と、理解を示してくれました。
すぐに家族会議が開かれましたが思わぬ意見が飛び出したそうです。
曰く、
親族さま「やると言った以上、最後までしっかりと面倒を看ることが責任というものだ。施設に入れたいというのは自分がこれ以上やりたくないからではないのか?」
親族さま「確かに3年ほどの家族介護と言った手前、押しつけになってしまって悪いとは思っているけどご近所の目もあるので施設入居は避けたい。なんとか頑張れないの?」
親族さま「あなただけで無理なら私たちも面倒見るわよ」
といった内容だったそうです。
その時の会議では結論が出ずに終わってしまったのですがそれから毎日、姉妹さんの誰かがお母さまのお見舞いに来るようになりました。
しかし30分ほど話をすると帰ってしまい排泄の世話や食事の世話などは一切してくれなかったそうです。
それどころか、
親族さま「お母さんがこんなに弱ってしまったのはアナタの介護が不十分だったからではないのか」
と心無い言葉を投げかける姉妹さんもいたそうです。
こんな状態が半年ほど続き長女さんは慢性的な介護ストレスに陥ってしまいました。
口数も少なくなり感情もあまり表に出さなくなってしまったのです。
訪問介護の職員さんがそのことに気づいて私のところに相談に来ました。
訪問介護士「介護疲れによるストレスで長女さんの状態があまりよくないのでカウンセリングをしてもらえないか。長女さんにはもう伝えているので連絡してもらって問題ないです。」
そこで連絡先をいただき長女さんに連絡を行いました。
介護生活が自分の人生になってしまった
カウンセリング資格を持っている相談員としてご家族さまのケアに携わることもよくあります。
多くはご家族さま自らが介護疲れについてご相談をいただくのですが、今回は訪問介護職員さんからのお問合せでした。
連絡をして訪問カウンセリングを行いました。
カウンセリングではまず、ご本人さんのお話を聞くことから始めます。
たいていの場合ストレスの要因は、ご自身で何をすればよいのか?が明確化れていないことからくる漠然とした不安やもやもやした気持ちです。
カウンセラーに思ったまま話をすることで自発的に心の整理をする必要があるのです。
これには時間がかかる場合があります。
今回のケースでは週1回程度のカウンセリングで対応に入りました。
3回目のカウンセリングで初めて気持ちの奥底にある気持ちが出てきました。
長女さんはご自身の人生が介護だけになってしまっていることに不安を覚えていたのです。
これは在宅介護でよくあることです。
しかし24時間つきっきりで生活を共にしているとそのことがわからなくなってしまうことがあります。
カウンセリングでそのことをご本人さんが自覚できたことは大きな成果だと思います。
介護は人生ではなく手段であることを理解されたことで心が整理され見えてきたことがありました。それは、
今のお母さまの状態はいつ何が起こるか分からず、在宅介護では限界にきていること。
これは手段からくる判断です。決して甘えや介護からの逃げではありません。
長年介護を続けていると表面上の変化だけではなく心の変化も感じ取れるようになってきます。
長女さんは心理的にお母さまの状態や在宅介護の限界を理解されていたのです。
そこで旦那さんを交えて長女さんが提案していた24時間介護ができる施設への入居について、もう一度検討することをご説明しました。
旦那さんもお母さまの状態を日々見ていることから理解していただけました。
長女さんのご家族の意思はまとまりました、つぎは姉妹さんのご理解を得ることです。
旦那さん主導で家族会議が開かれました。そこで改めてお母さまの状態について説明し施設入居の必要性を問いました。
前回と同様にかなりの反発が予想されました。
しかし、30分とはいえ姉妹の皆さんもお母さんの現状を見ていたことが幸いしました。
一定の理解が得られたのです。
最後まで反発していた次女さんは、
次女さま「近所の目があるからできれば在宅介護を続けたい。ウチが親の面倒を放棄したと思われるのは嫌だ」
と世間体を気にされていました。反発はあらかじめ予想されていたため、長女さんと旦那さんにちょっとしたアドバイスをしていました。
誰かが反発してきたのであれば、これまでの8年間の介護についてお話をしてください。とだけ伝えました。
長女さんは次女さんの反発に対してこれまでの介護についての苦労やうれしかったことを話したそうです。
排泄の世話のむずかしさ、床ずれにならないように何をしたのか、老人食に関する勉強をして実践していたこと、ある時、お母さまが、
「本当にありがとうね。」
と一言だけ言われたことに涙が止まらなかったこと。
話始めるとこの8年間やってきたことを思い出して言葉が止まらなかったそうです。
そして、途中から涙声になってしまい恥ずかしかった、と仰いました。
次女さんは黙って話を聞いていたそうです。
そしてその場ではそれ以上何も話さなかったそうです。
1週間ほど経過して次女さんが実家にやってきてお母さまと話をされた後、長女さんと少し話がしたいと言われたそうです。
そこで次女さんは、
次女さま「あれから考えてみたけど、お母さんを施設に入れる手続きをおねがいできるかしら」
と、言われたそうです。
長女さんはその時の次女さまの顔を今でも忘れられないそうです。
姉妹全員の理解が得られたことで施設入居で話がまとまりました。
ホスピスタイプの老人ホームへの入居
長女さんから施設探しに関するご相談をいただきました。
入居費用は親族で少しづつ負担することでまとまっていたので年金と合わせると費用面での懸念はありませんでしたが、無理なく捻出できる金額の算出についてはアドバイスを行いました。
例えば1家族当たり月に10万円出せるという場合、予算計算は10万円×家族数になると考えがちですがこれは危険です。
1家族当たりが10万円ねん出できるとしても予算は5万円~7万円で計算することが無理のない費用の計算概念となります。
家族で施設の利用費用を負担する場合の予算組みについては、【日吉】選んだ老人ホームの利用料を複数の家族で負担する時の計算方法をご参照ください。
特に姉妹さんが複数おられてみんなで少しづつ出し合うというケースではとても大切な概念です。
施設の入居条件は前述したように、24時間介護が受けられること、ですから予算概念に関してご説明を行い、姉妹さんにも伝えていただきました。
費用、条件共に決定いたしましたので24時間看護が受けられるホスピスタイプの老人ホームを探しました。
近場では空きがありませんでしたので車で30分圏内までエリアを拡大して探すと入居可能な施設が出てきました。
ご家族さまで1つ1つ丁寧に資料を見ながら良さそうなところに見学希望を出し日程の調整を行いました。
最終的な結論は姉妹の皆さんとの家族会議となっておりましたが、誰も不満や否定的な発言をすることなく長女さんが見学に行かれた施設への入居について同意されたそうです。
施設側も気持ち良く受け入れ意向を示していただけたので、入居日はすんなりと決まりました。
山王の老人ホーム生活も落ち着いて
お母さまが入居されてから持ち回りで週に1度ほど姉妹のどなたかが面会に行かれているようです。
職員の皆さまも暖かくとても丁寧な応対をしてくださっているので大満足です!と長女さんからご連絡をいただきました。
老人ホーム入居前から続いていた長女さんへのカウンセリングですが、お母さまが施設に入居されてから一度、ご要望をいただき訪問カウンセリングを行いました。
ストレスはかなり小さくなっており、長女さんがご自身の生活で新しい目標を見出されており、それに向かっていることがわかりました。
そこでカウンセリングはケースクローズでよいと思います、とお伝えしました。
帰り際、長女さんから、
長女さま「本当に何から何までありがとうございました。私と同じような人はたくさんいると思います。これからも頑張ってください。」
と、お声がけいただきました。
今回の件をケーススタディとして記事にしても良いかご質問すると、
長女さま「もちろんです。私と同じような経験をされている方はたくさんいると思います。言い出せない人の方が多いと思います。そんな方々に少しでも勇気がでるなら記事にしてください。」
と、快諾いただきました。
相談員として辛い時などにこの言葉を思い出すことがあり自分を奮起させています。
在宅介護に限界を感じているみなさまへ
親族介護でやむなく在宅介護を行うことになったご家族さまはとても多いです。
そしてそのほとんどのご家族さまが親族に対して不満を持っています。
それはとても簡単な理由です。
24時間介護をしなければならない人と、気になった時だけ顔を出す人とでは責任感が全く違うのです。
まわりから見ているだけの親族さまに多く見受けられるのが以下です。
・おばあちゃんは好きだけど排泄は嫌だ。
・一緒に住むことはできないけど、口は出したい
・自分の時間が無くなるのは絶対に嫌だから同居はしない
・おじいちゃんだけ別の食事なんか無理
・世間体があるから老人ホームはダメ
介護とはそんなに生易しいものではありません。
これから人生を終えるための準備をしている高齢者に対してあまりにも尊厳がありません。
食事介助や排泄介助、入浴介助など身体介護は慣れている介護士でも辛いものです。
また、夜勤を一人で頑張っている介護士にとって時間関係無く鳴るナースコールは本当にキツイのです。
それを介護経験がないご家族さまがいきなり実践しろと言われもできるわけがありません。
その中で模索しながら頑張っても親族の心無い一言で心は折れてしまいます。
在宅介護のご家族さまが心に持っている共通の言葉があります、それは、
「じゃあアナタが面倒看てよ!」
です。
好きな時に来て好きなことを言って家に帰るだけならせめて愚痴は言わないで。
そうでなければ言葉に対して責任をもってください、というのが在宅で介護をかんばっているご家族さまの本音なのです。
今、在宅介護を頑張っているご家族さまでこの言葉が口まで出かかっているのであればストレスはすでに限界に近付いていると思ってください。
それ以上、頑張る必要はありません。
介護する側、介護される側どちらが傷ついても在宅介護はうまくいきません。
当社では在宅介護の限界を迎えているご家族さまからの無料相談も受付しております。
過去に同様のケースに対してアドバイスとサポートをしてきた実績がございます。
問題を抱え込まずに専門家にご相談ください。
尚、当社の無料相談はいかなる場合においても費用が発生することはございません。
お気軽にご相談いただければ幸いです。
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