※相談事例は全てご相談者さまの了承を得て記事化しております。
同居のお母さまが軽度認知障害を発症
今回は長い期間を使ってゆっくりと老人ホームでの生活に慣れていただく手法をとった老人ホーム探しのご提案実例となります。
きっかけは世田谷区は千歳台にお住いのご家族さまから老人ホーム探しのご相談を受けたケアマネジャーからの連絡でした。
90歳になるお母さまは、2年前に骨折してから足腰が弱くってしまい現在は、ご家族さまが住む千歳台で同居生活をしています。
同居当時は認知症も発症しておらず排泄、更衣なども自立でした。
しかし、ここ1年ほどでADLが下がっており、加えて認知症を疑う症状が出てきました。
すでに他界されているご友人に会いに行く、といっておめかしをされたり、時間をあけずに何度も同じことを繰り返し訊いてくるようなことが多くなってきました。
そこで認知症診断を行うことになりました。
結果は軽度認知障害(MCI)でした。
※MCIとは記憶力が低下してきているが日常の生活に支障がない状態であり発症者の約45%が5年以内に認知症に進行する可能性があると言われています。
ご家族さまは3世帯で住んでおりお子さまが、認知症を発症する可能性があるなら老人ホームに入れてほしいと懇願されたそうです。
ネットで入浴やトイレでの排泄の失敗、徘徊、転倒など在宅介護の難しさを調べており同居はできないという結論に達していたのです。
当初こそご家族さまはお母さまの老人ホーム入居を反対されておりました。
育ての親を老人ホームに入れるよりも最期までご自宅で面倒を看ることを選択されていたのです。
しかし、お子さまから排泄の失敗による汚れやニオイ、転倒リスクなどをについて何度も説明されるうちにお母さまの安全を考えると、24時間面倒を看ることが出来ない在宅介護ではお母さまが幸せに暮らすことが出来ないと考えが変わってきたそうです。
何度も家族会議を開き最終的に老人ホームへの入居を決断されました。
しかし、いざ老人ホーム探しを始めようとしても何から調べればよいか分からず、あるあんしんすこやかセンター(地域包括支援センター)に相談をされたそうです。
デイサービスに行かなくなった理由
相談先のケアマネジャーからデイサービスを使ってみてはどうか、といわれデイサービスも試したそうですがうまくいかなかったそうです。
デイサービスの利用を開始してしばらくしてお母さまが、
「もうあそこには行きたくない」
と拒否するようになってしまいました。理由を訊くと、
「わたしはボケてないのにボケ老人みたいに扱われることに我慢できない」
というのです。デイサービスには予め、お母さまが軽度認知障害であることは伝えてありました。
症状を理解した上で対応していると思われていたのですが、実際には認知症を発症した方と同じような対応をされたことにお母さまが気持ちを害してしまったのです。
デイサービスに行かなくなってしまい家に閉じこもるような日々が続きご家族さまは悩まれたそうです。
そんなある日の夜、お母さまが洗濯室で何かされているのをお子さまが見かけたそうです。
排泄を失敗してしまったお母さまが誰も見られないようにこっそりと下着を洗濯されていました。
それを見たお子さまから老人ホームへの入居を検討する発言があったそうです。
お子さま「在宅で面倒看るのは難しいところまで来てると思う。デイサービスではなく24時間見守りをしてくれる施設に預けるべきだ」
千歳台の老人ホーム探し
排泄の失敗はご家族さまにとってかなりショックだったそうです。
自立していると思っていたお母さまが排泄で失敗してしまったこと、今後このようなことが頻繁におこるかもしれないと考えると在宅介護の限界を感じたそうです。
家族会議によりこれ以上、在宅で面倒を看るのは難しい、との結論になったそうです。
そこで再度、あんしんすこやかセンターのケアマネジャーに相談をしたところ、老人ホーム入居も選択肢の一つだとアドバイスされ当社を紹介されたそうです。
ご連絡をいただき現状をヒアリングすべくご家族さまに連絡をしました。
ヒアリングは東急田園都市線の二子玉川にある当社の相談室で行いました。
ヒアリング時点でのお母さまのADLがこちらになります。
食事:普通食(通常食)
歩行:自立
排泄:自立
更衣:自立
義歯:上義歯
認知症:軽度認知障害
老人ホームへの入居相談となりますので必須条件と充分条件を伺いました。
◆必須条件
・世田谷区内
・一時入居金:0~500万円まで
・月額利用費:24万円まで※ただし一時入居金を考慮の上変動
・看取りまで対応していること
◆充分条件
・お母さまと同じような症状のご入居者が多い
千歳台の最寄駅は小田急の千歳船橋、祖師ヶ谷大蔵になりますが縦に長いエリアとなるため千歳烏山や八幡山など反対側も候補対象となります。
早速、老人ホーム探しを開始します。
今回、当社で選んだのは住宅型有料老人ホーム、介護付き有料老人ホームです。
※施設の形態については「施設の種類」にてご確認いただけます。
世田谷区は新しい特養(特別養護老人ホーム)もあるため今回のケースでは対象となるのですが、お子さまから特養は考えないでほしい、と言われましたのでリスト外となりました。
世田谷区の介護付き有料老人ホームは一時入居金が1000万円前後になることがありますが、プランにより一時入居金を安く抑えてその分を月額利用費に割り振るような施設もたくさんあります。
お母さまの年金と貯金、さらにご家族さまから想定されているご予算をお伺いし最適なプランをまとめます。
リストアップが完了した後、改めて二子玉川相談室でお打ち合わせを行いました。
パンフレットだけでは見えない施設のホント
ご家族さまと一緒に暮らすことを何より大切にされているお母さまの心情を考えると、いきなり老人ホームへの入居ではなく段階を踏んで徐々に老人ホームでの生活に慣れていただくことが最良であると考え、本入居を踏まえたショートステイを提案しました。
リストアップした施設についてご説明をした後、4件の施設が興味対象の老人ホームとなりました。いずれもショートステイの受入をしている施設です。
すぐに4施設の見学依頼を作成しました。
見学日にはお母さまもご一緒することを提案しました。
今回の見学で必要なことはお母さまの表情や仕草を注意深く確認することです。 見学はモデルルームやパンフレットに書かれている施設情報を確認するだけではありません。
施設で生活をしているご入居者の表情やスタッフの仕事ぶりを見ることがとても大切です。
今回の見学では、お母さまがご入居者をどのように見ているかをよく観察する必要がありました。 各施設の見学後に私がまとめたメモの一部を下記いたします。
A施設:介護付き有料老人ホーム お母さまはあまり楽しそうではないと思える状況があったように思える。共用部で過ごされているご入居者を見て何か思われている気がする。ただお部屋はたいそう気に入っている。
B施設:介護付き有料老人ホーム レクリエーションを見ることが出来た。お母さまはレクリエーション自体には興味を持たれている感じだった。ただ、ご自身の孫の年くらいのスタッフが「〇〇さーん、お手洗いしちゃいましょう」など大きな声で発していることに驚いていたご様子。
C施設:住宅型有料老人ホーム 終始つまらなさそうな表情。施設長やスタッフは丁寧で業務スタッフも素晴らしい施設だがどこか表情が硬い。根本的に何かが違う気がする。ヒアリング必要。
D施設:介護付き有料老人ホーム 入浴場やレストランなどを見たときはとても喜んでいた。ただ、共用部にいるご入居者のほとんどが車いすに乗られているのを見てから何も発言しなくなったことが気になる。
今回は見学終了後、お話を伺う時間をいただくことが出来ませんでした。
そんな時は、気になるところがありましたらメールやお電話で仰ってください、と伝えて帰るようにします。
1週間ほどしてご連絡が無ければ当社からお伺いのご連絡をするようにしています。
ご連絡がに無いまま1週間が経過したので当社よりお電話しました。
すると、ご家族さまが老人ホーム入居に対して悩まれていることがわかりました。
お母さまはご入居というよりもホテルに滞在するような感覚で老人ホームを見学されていました。
そのお母さまから、
「どれも素敵なところだけども何日くらい居ればいいの?ずっとは嫌よ」
と言われたそうです。ご相談を受けたときから何となくそうなるような気がしていました。
従って、ショートステイを使った本入居のご提案を想定しておりました。
今回のようなケースでは強い帰宅願望が問題になることを気にしなければなりません。
4施設は全てショートステイの受入れをしています。
ただ4施設全部を試すというのはお母さまの心労を考えると現実的ではありません。
そこでご家族さまに、お母さまが気に入っていた施設を2つほどに絞ってショートステイをしてみませんか?と、ご提案しました。
帰宅願望が強くなることを考慮し4日ほどでテストすることになりました。
ショートステイで見えてきたこと
お母さまは旅行にお出かけする気分でしたので2つの施設を絞ることにそれほど苦労はしなかったそうです。
お母さまが選んだ施設は以下の2つ。
A施設:介護付き有料老人ホーム
D施設:介護付き有料老人ホーム
ご家族さまが旅行に行かれるという理由を作っていただき2つの施設で4日間過ごしていただくことになりました。
ショートステイが終わった後、お時間をいただきお母さまからの感想をいただくお時間をいただきました。以下はその時のお母さまの感想です。
A施設:
レストランで一緒になった方がとても面白くてついつい話しちゃうの。一番最初に行った時はみんなボケちゃってるわ、って思ったんだけど違うのね。あと、お風呂でヘルパーさんが身体を洗ってくれるのよ。ちょっと恥ずかしかったけど便利ネ。
D施設:
朝の体操とかおやつ前の催し物?に参加しませんかって何度も来るのよ。
行きたい時は自分で行くし、行きたくない時はいきたくないわ。強制されるのは嫌。
でもお食事は美味しかったわね。
この発言には各施設の運営方針が表れていると言えます。
D施設は体操やレクにできるだけ参加していただきたいという施設の想いがあります。
A施設のレストランは同じようなADLのご入居者が食事をするテーブルに案内したことがわかります。また、見守りの入浴介助を行っていることもわかります。
お母さまは全体を通してどちらの施設についても満足いただけたことがわかります。
さてここで見学時に持たれた、ご家族さまのご意見を反映してみようと思います。
A施設:
見せていただいたお部屋が明るく、日の入る部屋だったのでとても良かったです。施設長も丁寧な方でできること、できないことも含めて親切に教えてくれました。
共用部のお手洗いや入浴場所も新しいし綺麗でした。
D施設:
建物が新しくて全体的に綺麗だなって思いました。スタッフの方が常に見守りをしているのがわかりました。あと、ちょっと気になったのですが車いすの方が立とうとするとスタッフさんがすぐに座らせるのは転倒予防ですか?仕方がないと思うのですが、お一人だけ大きな声で「おばあちゃん立たないで」って言っていたのが気になりました。
ちなみにどちらの施設でもお母さまは当日、ご自宅に帰ろうとされたそうです。
D施設では3日目のおやつ後に荷物をまとめたバッグを持って事務所に「帰りますので開けてください」と言われたそうです。
帰宅願望は強めであることがわかります。
ショートステイの体験及びお母さまとご家族さまのお話をまとめるとA施設が第一候補となりそうです。
その旨をお話すると、ご家族さまもやはりA施設が良いという感想を持たれていました。
ここで第一段階はクリアです。
次にお母さまの帰宅願望を薄くするためにすべきことをご提案いたしました。
帰宅願望を薄くし施設に慣れるためにすべきこと
施設候補が決定いたしましたので次にすべきは、お母さまに施設で暮らすことに慣れていただくことです。
老人ホームに入居後は多かれ少なかれ帰宅願望が出ます。
それまでに住んできたご自宅を離れ、知り合いがいないところで生活を始めるわけですからストレスがたまるのは当然です。
今回のケースでは当初よりお母さまの帰宅願望が強くなることが想定されておりました。
しかし、施設も帰宅願望については熟知していますからスタッフさんがしっかりとケアをしています。
本入居を検討している施設に早く慣れていただくため、1か月に1回程度、ショートステイを使いお母さまに施設慣れしてもらうことをご提案しました。
ご家族さまとお話をして翌月、1週間のショートステイをしていただくことになりました。
A施設を気に入っていたお母さまは楽しそうに施設にやってきました。
しかし週半ばになり帰宅願望が強くなります。
夕方になると帰宅することを強く望まれることがあったそうです。
また、夜10時くらいに帰宅支度をして居室から出てくることもあったようです。
帰れないことがわかると、家族に電話をして迎えに来てもらいたい、と言われることもあったようです。
帰宅願望が強いご入居者によくある行動といえます。
ただ、ご自宅に戻ると、楽しそうに施設での話をされたそうです。
3か月目も同様に1週間のショートステイを行いました。
前回と同じく週半ばになると帰宅願望が強く出ています。
そこでご家族さまに面会をご提案しました。
面会でお母さまから、
「施設に不満はないけど自由に外に出られないし、夜が早すぎてつまらない」
という発言があったそうです。
それとコーヒーを好きな時に飲めないことに強い不満を抱いていることがわかりました。
ただ施設でお友達も出来てきているようでレストランでの食事やお友達と一緒にレクリエーションを愉しんでいました。
4か月目も前回と同じように1週間のショートステイの予約を取りました。
但し今回のショートステイは前回のショートステイから10日後と前回から日程をあけないようにしています。
また、好きなコーヒーがいつでも飲めるようにコーヒーメーカーと夜に読む本を何冊か持参していただくようにもしました。
ご自身がやりたいことが出来るような環境作りをしたのです。
すると、以前よりも帰宅願望が薄れてきていることがわかりました。
仲の良いお友達とまた会えることを楽しみにするような発言もあったそうです。
ショートステイ中、夜に居室から出てくることも減り、電話をかけたいと事務所に来るような行動も少なくなっていました。
ご家族のご了承を頂いたので、このタイミングでショートステイから本入居に変更手続きを行いました。
あわせて本入居から3か月ほどは週に1回程度、面会をされることをご提案いたしました。
現在、半年が経過しておりますがお母さまは施設にも慣れてきて、帰りたい、と言われることはほとんど無くなってきたそうです。
たまに外泊をしたり、ご家族と外でランチに行かれることを愉しみされていました。
こうしたお話を伺い、お母さまが老人ホームでの生活に慣れてきたことがわかりましたので今回のケースをクローズしました。
老人ホームで暮らすということは今までの環境を180度変えることですから、ご本人さまにとってはとてもストレスがたまることでもあります。
そのストレスをどうやって軽減するかについて提案することもまた、紹介会社の役割ではないかと当社では考えております。
ご相談から半年をかけた今回のケースですが、記事化についてご家族さまにお伺いするとありがたいお言葉をいただきました。
「ここまでしてくれるとは思っていませんでした。同じような経験をされている家族もいると思いますから施設名と金銭面だけ伏せていただければ記事にしていただいて結構です。」
ありがとうございました。
当社で公開している記事は全て記事化に対してご相談者さまの了承を頂いております。勝手に記事にするようなことはございませんのでご安心ください。
また、ご利用に対して費用のお問合せを頂くことがございますが、いかなる場合においても費用が発生することはございません。
老人ホームは35%の比率で失敗してしまったと思われるご家族さまがいると言われています。
高いお金を払う老人ホーム選びにおいて失敗は許されません。
リスクを少しでも回避するために介護業界に精通しているアドバイザーを付けることは失敗しない老人ホーム選びにおいて大切なことであると当社は考えております。
これから老人ホーム探しを始めようと検討されるご家族さまは一度、当社までお問い合わせいただければ幸いです。
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