※相談事例は全てご相談者さまの了承を得て記事化しております。
母とは同居はできません
フリーダイヤルに老人ホーム入居相談が入りました。
骨折で入院しているお母さまは退院してもそれまでのように独居は難しいと判断されているので、入居先の老人ホーム探しのアドバイスをご希望されております。
ご家族さまとお母さまとは過去の遺恨があり家族仲が良くありません。
同居はできないし、面会にも恐らく行くことはないと思いますがそれでも老人ホームを探してもらえるでしょうか、というお話でした。
何があったのかをヒアリングしました。
お母さまはとても気の強い方でご自身で化粧品会社を経営されておりました。
高齢となり経営から外れる際にご長男さまを次の代表取締役とすることを考えておられました。
ご長男さまは広告代理店勤務で部長職に就いており退職する意思は全くありませんでしたがお母さまは譲りませんでした。
最終的に退職しお母さまが経営する化粧品会社に就職することとなりましたが、ご長男さまは納得しておらずこの時のことが原因でご家族の仲は悪くなってしまったそうです。
お母さまは退院後も気ままに暮らしたいためセンター南のご自宅で独居を継続するつもりでいましたが、医師より短期記憶の低下が顕著にみられるため一度、認知症検査を受けたほうが良いと言われ、お母さまに相談したところ猛烈な拒否をされてしまっています。
ご長男さまも短期記憶の低下については何となくそうではないかと思っていたため医師からの認知症検査については納得されていましたが、お母さまは頑としてテストを受けようとしません。
老人ホームの入居を強く否定
入院先の病院からは退院しても独居は危険すぎるので何か対策をしたほうが良い、と言われています。
訪問介護サービスの利用を検討しましたがお母さまは納得しません。
デイサービスの利用についても説明しましたが、私は私でちゃんと生活できる!と全く理解を示してもらえないそうです。
しかしこのまま自宅に戻ったとしても認知症の進行で徘徊がはじまったり、転倒してまた骨折するリスクがあるため何か対策を立てなければならず、地域包括支援センターに相談をしました。
担当者は施設型の老人ホームで安全を確保するのはいかがか、と提案されたそうです。
しかし老人ホームの知識を全く持っていないご長男さまは何をすればよいか分からず担当者に相談したところ、入居相談を行っている会社があるから相談してみてはいかがでしょうか、とアドバイスをされたそうです。
そこでインターネットで調べたところ、当社の相談事例を発見、ご相談となりました。
ご長男さまは当社で同じようなケースを扱った事例を読まれていました。
看取りまでお願いしたい
お母さまのADLを伺いました。
【お母さま:78歳】
食事:普通食(通常食)
歩行:自立
排泄:自立
更衣:自立
義歯:ナシ
認知症:アリの可能性大(短期記憶障害)
お母さまは認知症診断を受けることを拒否していますが認知症を発症している可能性が高いことが分かっております。
また、もとの生活に戻ることしか考えていないため、老人ホームに入居すると強い帰宅願望が出る可能性があります。
また、お母さまは経営を譲ったとはいえご自身で大きくされた会社に対して思い入れがあります。
定期的にご長男さまから会社の状況を伺うことを楽しみにされていました。
しかし、ご長男さまはお母さまに対して会社の状況説明をするつもりはないとのことです。
また、老人ホームに入ったのであれば最期まで施設で面倒を看てもらいたいという意思が明確でした。
お母さまのADL低下に合わせて施設を変えるようなプランもありましたがあまり良い返答は得られませんでした。
現在のところ短期記憶が低下しているだけですが認知症が進行すれば今後、見当識障害だけではなく徘徊なども始まるかもしれません。
また、身体介護が必要になる可能性もあります。
本来であればサ高住か住宅型有料老人ホームが好ましいと思いましたが、後々の事まで考えるのであれば介護付き有料老人ホームが適切であると考えました。
ご長男さまに施設選びの必須条件を伺いました。
◆必須条件
・一時入居金:150万円以内
・月額利用費:20万円前後
・看取り対応
◆充分条件
・即入居可能
・キャンペーンなどがあれば優先
一時入居金の金額はいただきましたが入居キャンペーンなどがあればそちらの施設を優先したいということでした。
今回に関しては施設の立地は全く関係ありませんでした。
なぜならご家族さまが面会に行く予定はないからです。
早速施設探しを行います。
今回の点で重要なことは以下となります。
・キャンペーンなどで一時入居金が安くなっている施設
・強い帰宅願望に対処できる施設
・お母さまの入居方法
特にお母さまの入居方法については慎重に考えなくてはいけません。
施設はすぐに見つかりました。
キャンペーン中の施設もいくつか見つけることが出来ました。
ご長男さまと面談する機会を頂き施設についてご説明しました。
すると、キャンペーン中であった2施設について見学依頼を頂くことが出来ました。
センター南から少し離れた老人ホームにショートステイ
ご長男さまの施設見学に同行し感想を頂く時間をもらいました。
ご長男さまは最初に行った施設が良さそうなので手続きを取りたいとお話されました。
施設側には見学依頼書を出す際背景のご説明をしており、お母さまの状況を見ながら判断したいとの意向を頂いておりました。
ちなみに事前の懸念点を施設側にはこのように説明しております。
・認知症診断は受けていないが認知症を発症している可能性が高く、短期記憶の低下が見受けられる。
・ご本人は老人ホームに入る意思はなく、強い帰宅願望が出る可能性がある。
・強い性格なのでショートステイ中に暴言などが出る可能性がある。
・携帯電話の使用を注意深く観察し適切な判断をしていただきたい。
この施設では軽度認知症や軽い認知症のご入居者さまに対してたくさんのケア経験を持っています。
もちろん、帰宅願望についても対応方法が確立してます。
施設長も長年同じ施設で勤めているため、施設内の状況もしっかりと把握できており安心してご提案はできました。
お母さまの状況がわかりづらいためショートステイを使いアセスメントをすすめ、そのまま本入居契約につなげるプランを作りました。
お母さまが退院した日にそのまま施設へのショートステイとなりました。
強い帰宅願望
入居日にご挨拶に伺いました。
お母さまは老人ホームをホテルと思われたようでした。
この施設は見た目は集合住宅というよりもホテルに近い外観を持っているためそう思われたのかもしれません。
これからショートステイが始まりますが気を抜けないと思いました。
入居がスタートして4日ほどは何事もなく過ぎました。
5日目にご長男さまからお電話を頂きました。
お母さまから電話があり、そろそろ家に帰りたいので迎えに来てほしい、ということでした。
やはり、お母さまは施設をホテルと思われていたようで、滞在にも飽きたので家に戻ります、ということでした。
ここからが難しいところです。
施設はご長男さまに連絡をしておりしばらくは帰宅願望が強くなる可能性があるので面会は控えてほしい、電話もできればしばらくの間、出ないでほしいとお伝えしていました。
帰宅願望が強い場合、施設に慣れていただくためにこのような対応をすることがあります。
1週間のショートステイが終了し施設の合意も得られたことからお母さまの本入居が決まりました。
今回の事例では本入居が決まってもまだ気が抜けないため、ご長男さまとは定期的に連絡を取るようにしました。
本入居がスタートしてからお母さまの帰宅願望が日増しに強くなることが報告されました。
施設は帰宅願望について豊富な経験を持っています。
その点はご長男さまも理解されており、しっかりと対応してくれているということでした。
ご長男さまには、施設とのコミュニケーションを大切にしてください、とお伝えしております。
施設もお母さまの現状をこまめに報告しているためお互いに信頼関係が生まれてきていることが分かりました。
これはとても大切なことです。
保証人と施設の間に信頼関係が築けなければトラブルになってしまう可能性があるからです。
お母さまの帰宅願望は薄れることはなく、強くなっていることが報告されました。
それまでは、明日帰宅ですよ、とお伝えすると機嫌がよくなりお部屋に戻られていたのですがこの頃は、明日の何時ですか?と訊き返したり、ここで一番偉い人は誰?その人から文章をもらいたい、と言われるようになっていました。
また時折、感情が爆発してしまうこともある様でした。
想定されていたこととはいえ入居相談員としてお手伝いができるのであれば全力でお手伝いをするつもりです。
少しづつ弱まる帰宅願望
ご長男さまはやっと入居したのでなんとかこの施設で面倒を看てもらいたいという想いが強く感じられました。
もしも受入れ拒否になってしまったらお母さまをまた老人ホームに入れるのが大変になってしまうことを危惧されていました。
ご長男さまは施設からお母さまの電話に出ないようにということも守られています。
お母さまはご長男さまが迎えに来ないこと、電話に出ないことにご立腹していたようです。
1か月が経過したころから少し様子が変わってきたことが報告されました。
お母さまに日中、一緒に過ごせるお友達が出来たそうです。
それにより以前よりも帰宅願望が薄れてきていることが報告されました。
以前は30分おきに事務所に来ていたお母さまですが、お友達とお話している時やレクリエーションに参加されている時は楽しそうにされているとのことでした。
施設慣れをしてきたことが分かりました。
最近は施設で生活することを理解してきているようだとの報告も入りました。
施設もアセスメントを更新しながらお母さまのケアを続けており、お母さまが入浴介助で男子に対して強い拒否感を持たれていることから現在は同性介助になっているなどが報告されていました。
一時の強い帰宅願望が薄れてきて、施設の楽しみ方を探し始めたことが分かってきましたので本案件を一時的にクローズといたしました。
最後にご長男さまが言われたこと
ご長男さまは当初、お母さまが老人ホームに入居しても面会には行かないと言われておりました。
しかし、施設からお母さまの日常生活についてのお話を何度も伺うことで心情に変化が出てきたそうです。
色々あったにせよ、肉親であることやお母さまが心血を注いで作った会社の現状に興味を持たれていることなどを報告しに行かれることを決めたのです。
施設長とタイミングを話しながら面会に行かれると仰いました。
ご長男さま「施設長と話をして来月に一度、母に会いに行くことにしました。すべてを水に流すということでも無いのですが、母に会社の現状などを話してこようと思います。」
何かこちらでお手伝いできることがあればお気軽にご連絡ください、とお伝えしました。
お母さまが老人ホームに入居されたことで少し家族間の距離感が変わったのかもしれません。
これはうれしいことです。
このような家族間の関係が微妙な場合の老人ホーム探しなどのご相談も多く入ってきます。
たいていの場合は記事化NGになってしまうのですが、今回はご長男さまから記事化について了承を頂けました。
とても稀有な相談事例となりました。
当社では老人ホームの入居相談窓口を開設しております。
以下よりお気軽にご相談いただくことが可能です。
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