※相談事例は全てご相談者さまの了承を得て記事化しております。
南大泉から住み替えのご相談
入居している老人ホームに対して不信感を持っているご家族さまから住み替え(転居)先を探して欲しいとのご相談を頂きました。
昨今、住み替えに関するご相談が増えてきていますが、慣れ親しんだ施設を離れて新しい施設に住み替えをするのは利用者さまにとって大きなストレスにもなりかねません。
住み替えを検討されている理由をお伺いいたしました。
ご入居されているのは84歳になるお母さまでした。
お母さまのADLは以下となります。
【お母さま:84歳】
食事:普通食(通常食)
歩行:歩行器(居室内自立)
排泄:自立
更衣:自立
義歯:なし
認知症:ナシ
要介護:1
パーキンソン病
お母さまは川崎市の高津で独居されておりましたが骨折により足腰が弱くなってしまい、退院後もリハビリを続けていました。
週に3回の訪問介護を利用しておりましたが精神的に弱ってしまい、誰かと一緒に暮らしたいとご長男にご相談されたとのことです。
ご長男は練馬区の南大泉で川崎市の高津までは電車で1時間以上かかるところにお住まいでした。
お母さまから同居の話を受けて一時は在宅介護も検討されたそうですが一番下の子が大学生であること、奥さまも会社勤めのダブルワークで日中誰も面倒を看ることが出来ないことなどから同居をあきらめ老人ホームへご入居となりました。
いくつもの老人ホームを見学された中からお母さまに一番合っていると思われた大手の介護付き有料老人ホームにお願いすることにしました。
お母さまも同年代の利用者さまがいることからその老人ホームへの入居を承諾されたそうです。
最初の1年は何事もなく過ぎたのですが翌年からお母さまの転倒事故が発生します。
幸いにも大事には至らなかったのですが、ある時から施設の報告に疑問を抱くようになったそうです。
転倒事故のすべてが居室内
ご家族さまが疑問に思ったのは何度目かの転倒事故が発生したときの事故報告の連絡でした。
施設長から事故の経緯を伺っていてると、疑問に思うことがあったそうです。
これまでお母さまが転倒する事故は何度も発生してはいましたがその全てが居室内で発生していると報告されていました。
日中、夜間問わず全ての事故が居室内で発生しておりいつも、スタッフの目の届かないところだったため防ぐことが出来ませんでした、という内容でした。
一度や二度ならまだしも10回以上転倒しているお母さまに対してその全てが居室内で発生しており、スタッフには防げない事故でした、との報告に対して不信感を持たれるようになっていました。
そのような中、また新たに転倒事故が発生しました。
日中、お母さまがお昼寝をしておりその間、施設スタッフは他のご入居者のケアを行っていたとのこと。
おやつの時間となりお母さまのお部屋に訪室したところお母さまがトイレ前でうずくまって転倒しているのを発見。
頭を打っておりその場でバイタルチェックを行い緊急搬送されたそうです。
CT検査などを行い正常値であると診断されるも以降3か月は経過観察が必要となってしまいました。
この報告を受けて長男さまは施設長に、顔に大きな青タンが出来る程の転倒であれば音もかなりしたはずですが、誰も全く気付かなかったのですか?と質問されたそうです。
施設長はこの質問に対して、おやつ配膳の時間は忙しくスタッフがバタバタとしているため転倒音に気付いたスタッフは誰もいませんでした。以後、この点に対して対策を講じます、と言われたそうです。
ご長男はこの説明を受けて、
忙しい時に起こった事故なんだから仕方がない
と言われているように感じたそうです。
この事故報告を受けて今の施設はお母さまにとって良くないのではないか、という疑問が確信に変わったそうです。
そこで住み替えについて検討されたということでした。
施設が居室内転倒を強調するわけ
お話を伺ってご家族さまが不信に思われている点についてご説明をいたしました。
【1】居室内転倒と共有部転倒の違い
老人ホームでは介護スタッフが利用者さまの安全を守る義務があります。
しかし24時間つきっきりですべての利用者さまを見守ることは不可能です。
居室内で過ごされている利用者さまを24時間スタッフが見守ることは出来ませんので居室内転倒を100%防ぐことなど出来ません。
転倒については過去に損害賠償の訴訟が起こされています。
しかし、居室内転倒において施設が過失責任を問われることはほとんどありません。
施設が居室内まで安全を担保することは出来ない、という裁判所の判断なのです。
では共有部での転倒ではどうでしょうか?
利用者さまに転倒リスクがある場合、施設はその利用者さまが転倒しないよう常に配慮し適切な措置をとることが求められます。
これを安全配慮義務と言います。
共有部はスタッフが往来することができる環境となりますので、環境を整備することで転倒を防止するための適切な措置を取ることが出来ると判断されます。
つまり、共有部での転倒では施設が過失責任と問われる場合があります。
今回のケースではお母さまはパーキンソン病ですから転倒しやすい利用者さまであることを施設は理解しています。
転倒しやすい利用者さまであることを理解した上でケアを行わなければなりません。
転倒について常に意識し転倒リスクを先読みしながら仕事しなければならないのです。
これを予見可能性といいます。
同時に転倒リスクに対して適切な措置を講じることを結果回避義務といいます。
【2】施設が居室内転倒を強調するわけ
※本当に全転倒事故が居室内で発生している可能性もあります。これから書く内容はあくまでも仮説としてご理解願います。
施設にとって訴訟は最大限回避したいと考えます。
ほとんどの施設では、仮に訴訟になったとしても過失を問われるような判決を避けるべきにはどうすればよいか、と考え対策を取っています。
施設長が「居室内転倒」を繰り返すのは訴訟として考えた場合、大きな意味を持ちます。
居室での転倒について施設が過失責任を問われることはほとんどありません。
なぜなら、居室内で利用者さまが転倒しないように24時間見守りを行うことなどできませんし、その義務もないからです。
しかし、共有部でテレビを見るなどして過ごされていたお母さまがスタッフの見守りが無い状態で立ち上がり転倒した場合は、安全配慮義務と転倒における予見可能性が問われることになります。
お母さまはパーキンソン病であり転倒リスクが高いことは施設も知っていたことになります。
転倒リスクが高いにも関わらず見守りを行っていなかった(結果回避義務違反)ということになれば過失が問われます。
今回のヒアリングで頂いたお話がどこまで真実なのかについてはわかりません。
ただ、私が介護士時代に経験した経験談からお話をすると、同じ利用者さまが10回以上も転倒しているにもかかわらず、その全てが居室内転倒という事例はありません。
【3】訴訟対策になっていなかったか?
今回のケースにおいて施設側が訴訟対策を講じていたのではないか? という点が気になります。
居室内転倒を強調していたのは訴訟対策ではないのか?という疑問は抱きました。
ただ、事実はどうなのかにせよ、施設側の説明に対してご家族さまが不信感を抱いたのであれば住み替えという選択肢に間違いはないと考えます。
なぜなら不信感を持たれたご家族さまと施設が良好な関係を取り戻すことは難しいからです。
転倒リスクの高い利用者さまをお預かりしている施設を探す
ご長男が今の施設に対して不信感を抱いており、住み替えを強く希望されていることが理解できました。
入居相談員として施設探しのお手伝いをはじめました。
まずは必須条件と充分条件の洗い出しを行いました。
◆必須条件
・一時入居金:150万円
・月額利用費:25万円まで
・転倒リスクに対するノウハウを持っている施設
◆充分条件
・一時入居金ゼロ円
・社員教育がしっかりしている
・ご飯がおいしい施設
一時入居金についてはキャンペーンなどで無料となっている施設があれば見学したい、という意向は頂いております。
今回の件で一番大切なことは、転倒リスクに対するノウハウを持っている施設を探すということです。
どこの老人ホームでも転倒リスクに対する対策はしっかりと確立されています。
今回はさらに入居相談員としてパーキンソン病の利用者さまや転倒リスクが高い利用者さまを現在お預かりしていることを主軸において施設探しを開始しました。
なおお母さまは現在、介護付き有料老人ホームにご入居されていますので施設形態は同じ介護付き有料老人ホームが好ましいと考えました。
施設を探していくといくつか諸条件に合致する施設がでてきました。
その中から現在、転倒リスクが高い利用者さまをお預かりしており対策が充実している施設を絞り込みました。
リストがまとまったところでご長男にリストをご提案しました。
リストに記載がある施設について質疑応答形式でご説明をする時間を頂き、2つの見学先を頂くことが出来ました。
住み替え先を決めた理由
見学依頼を頂いた施設はどちらも事前にお母さまがパーキンソン病で転倒リスクが高いことを施設に説明しています。
施設からも転倒リスクに対して十分な対策が取られていることを確認しています。
見学内容や施設詳細については伏せることが条件となっていましたので詳細や見学後の感想については割愛いたしますが、見学した中のある施設について住み替えのご依頼をいただけました。
施設を決められた理由について回答いただくことが出来ました。
・施設長が真面目で誠実そうだったから
・以前の施設と比べて全体的に安心できる雰囲気がした
・お母さまが好きな食事メニューだった
・共有部で過ごされている利用者さまに対してスタッフが丁寧だった
・利用者さまを無視するなどの光景が見られなかった
・言葉遣いが丁寧だった
気になったのは、利用者さまを無視するなどの光景がなかった、という点です。
今回の見学では食堂や共有部などで過ごされている利用者さまも見ることが出来ました。
ご長男はそこで利用者さまとスタッフの関りをよく観察されていました。
施設長もご長男が立ち止まって利用者さまを観察されていることは気づいていたと思います。
それでもせかすことなく横で笑顔で見ていたことから社員教育には相当力を入れていることが分かりました。
接遇に対して自信があるのだと感じました。
ご家族さまがこの施設を選んだことは最良の選択だと感じました。
残念なことですが忙しさのために利用者さまの意思を無視するような対応を取ってしまう施設があります。
例えば、転倒リスクがある利用者さまが居室に帰りたい、と伝えても居室内転倒を避けるため、利用者さまの意思を無視して共有部で集団管理を行うなどです。
まるでそこに誰もいないかのように利用者さまの主張を無視して他の仕事をするような施設もまだまだあります。
認知症や車いすの方が集められれている共有部で10分ほど見学していればその施設がどのような対応をしているか、ある程度見極めることは出来るでしょう。
少ない人員で施設を管理しなければならない老人ホームの事情もあるためすべてが悪であるとは言えません。
ただ、ご家族さまの目線から考える時は少し立ち止まって介護士がどのような対応をしているかを見極めることは、見学時においてとても大切な作業だと思います。
失敗しない老人ホーム選び
老人ホーム選びに失敗してしまった方の大半が施設の新しさや豪華な食事、豪華なアクティビティなど表面的なことにとらわれてしまっていると言えます。
老人ホーム選びで大切なことはそこで働いている介護士と利用者さまとの関わり方です。
老人ホーム探しをされているご家族さまはその点を考えながら見学をされることで、失敗しない老人ホーム選びに近づくことが出来ると当社では考えます。
評判の芳しくない施設にはある共通点があります。
それは、妥協です。
この業界でよく使われる呪文のようなことがあります。
利用者さまに寄り添った介護
です。
しかし、人手不足により施設都合のケアになってしまった結果、それが幻になってしまった施設をたくさん見てきました。
そのような施設は必ず同じことを言います。
「本来は入居者さんに寄り添わなきゃいけないんですけどね。理想と現実は違いますから。」
逆に評判の良い施設は妥協を嫌います。
できるだけ利用者さまのやりたいことをサポートする、というスタンスが現場の介護士に浸透しています。
できるだけ妥協はしない、と思うスタッフが手を動かしており、そのスタンスを施設が応援している老人ホームはおのずと評判がよくなります。
当社では施設の評判をチェックしながら提案リストを作成しております。
老人ホームを探しているご家族さまから住み替えを検討されているご家族さままで、丁寧にヒアリングをしながら希望と現実に近い施設をみつけるお手伝いをしています。
ご相談はいかなる場合においても費用が発生することはございません。
気になる方は以下よりご相談いただければ幸いです。
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